Ferrari 512 BB (Berlinetta Boxer) '76の公式解説
1971年、12気筒エンジンを搭載するフェラーリのフラッグシップに、初めてミッドシップ・レイアウトを取り入れたモデルが発表された。同年のトリノショーで公開された365GT4/BBだ。車名にあるBBという言葉にはふたつの意味が込められていた。1つはクーペボディを表す「ベルリネッタ」。そして、もう1つは水平対向レイアウトの通称「ボクサー」である。これは新たに開発されたエンジンが180度のバンク角を持つV型エンジン、すなわち各バンクのピストンが水平に向き合う位置関係を持っていたことが理由であった。
1973年よりデリバリーが開始された365GT4/BBだが、3年後の1976年には早くも進化バージョンである512 BBが登場する。大きく変わったのはエンジンで、排気量は600ccほど拡大され5Lに到達した。車名の512は排気量5Lでシリンダーが12個あることを意味している。最高出力は365GT4/BBを20PS下まわる360PSだったが、最大トルクは4kgfm上乗せの46kgfmまで引き上げられた。シャシーは鋼管スペースフレームで、ボディデザインはピニンファリーナとスカリエッティの共同制作。ボディは鉄とアルミ、そしてFRPで構成されている。
365GT4/BB、512 BBにはともに「最高時速302km/h」という公式データが掲げられた。これは1971年に発表されたランボルギーニ・カウンタックの「最高時速300km/h」を意識した数値といわれている。当時の日本では、空前のスーパーカーブームが巻き起こっており、512 BBとランボルギーニ・カウンタックが人気を二分していた。「公道での世界最速車」はどちらか、というのは当時大きな注目を集めていたのである。